顔・顎まで腫れている
「頬が腫れてきた」「顎のあたりがパンパンに腫れる」「片側だけ顔が腫れてきた」―― こうした症状は、歯や歯ぐきの感染が広がり、膿(感染性の炎症)が周囲組織まで波及している可能性があります。腫れは放置すると増悪しやすく、痛み・発熱・開口障害(口が開けにくい)などを伴うこともあります。特に、顔面の腫脹は「緊急性が高いサイン」になり得るため、早めの診断と適切な治療が重要です。
顔が腫れるときに起きていること(歯性感染の拡大)
歯の根の先や歯周組織で起きた感染が、顎の骨(顎骨)や筋膜間隙へ広がると、歯ぐきの腫れだけでなく、頬・顎・口の周囲まで腫れることがあります。これは「痛みの強弱」にかかわらず危険性があり、膿の出口がなくなると腫れが急に強まることもあります。
よくある症状
- 頬・顎が腫れて左右差が出る
- ズキズキ痛い/噛むと痛い/触れると痛い
- 発熱、だるさ、頭痛がある
- 口が開けにくい(開口障害)
- 飲み込みにくい、喉がつまる感じがある
- 歯ぐきの腫れや膿、口臭、膿の味を伴う
考えられる原因(歯内療法で重要な鑑別)
1)急性根尖性歯周炎/急性化膿性歯周炎(根の先の感染)
虫歯が深く進行して神経が感染したり、根管治療歯が再感染したりすると、根の先で膿が形成され、急性増悪を起こして頬・顎まで腫れることがあります。この場合、感染源は歯の内部(根管)にあるため、単に抗生剤で抑えるだけでは再発しやすく、原因歯の診断と感染源への処置が重要になります。
2)歯周膿瘍(歯周病由来の急性腫脹)
歯周ポケット内で感染が起こると、歯ぐきから顎周囲へ腫れが広がることがあります。歯周病が進行している場合は、限局的な深い歯周ポケット、出血、動揺などを伴いやすい一方で、根管由来の腫脹と混同されることもあるため、歯周検査と画像評価で鑑別します。
3)智歯周囲炎(親知らず周囲の感染)
親知らず(特に下顎の水平埋伏など)周囲の炎症が強くなると、顎角部~頬に腫れが出たり、口が開けにくくなったりすることがあります。歯内療法領域とは異なりますが、症状として非常に似るため、原因歯を見誤らないことが重要です。
4)歯根破折・クラックを背景とした感染
神経を取った歯や強い力がかかる歯では、歯根破折やクラックが感染の入口となり、急に腫れが強く出ることがあります。破折が原因の場合、根管治療だけでは改善しないことがあるため、診断段階で可能性を評価します。
この症状は「急ぎ」の可能性があります
顔面の腫脹は、感染の広がり方によっては短時間で悪化することがあります。特に次の症状がある場合は、早めの受診が必要です。
- 腫れが急速に広がる
- 38℃前後の発熱、強い倦怠感
- 口がほとんど開かない、飲み込みづらい
- 息苦しさ、声が出しづらい
- 首まで腫れてきた、強い痛みが続く
応急対応について(自己判断で悪化させないために)
腫れているときは、強く押したり、針で刺したり、無理に膿を出そうとしたりするのは避けてください。入浴・飲酒・激しい運動は血流を増やして腫れや痛みが増すことがあります。痛み止めで一時的に楽になることはありますが、根本原因は残るため、早めに診断を受けることが重要です。
- 腫れを強く押さない/刺激しない
- 入浴・飲酒・運動は控えめに(悪化することがあります)
- 痛み止めは用法を守って使用
- 抗生剤は「必要な場合」に限り、医療機関の指示で
当院での診断(原因歯の特定と拡がりの評価)
顔や顎まで腫れている場合、最優先は「原因歯の特定」と「感染の拡がりの評価」です。当院では、症状・視診・触診に加え、必要に応じてCTを用いて、根尖病変の大きさ、未処置根管、根管治療歯の再感染、破折疑いなどを評価し、適切な治療戦略を立てます。
- CT/レントゲンで根尖病変・骨内の炎症範囲を評価
- 歯周検査(歯周膿瘍・エンドペリオ鑑別)
- 原因歯の修復状態(被せ物の漏洩、二次う蝕)確認
- 開口量、嚥下、呼吸状態など全身症状の確認
治療方針(原因別)
根管由来の場合:感染源に対する歯内療法(初回/再根管治療)
根管感染が原因の場合、腫れを引かせるためには「膿を作っている感染源」をコントロールする必要があります。具体的には、根管内の清掃・消毒・封鎖、必要に応じた排膿処置、症例によっては外科的歯内療法の適応検討を行います。
歯周由来の場合:歯周治療/炎症コントロール
歯周膿瘍が主体であれば、歯周ポケット内の感染源に対する処置と、咬合・清掃性の改善が中心になります。根管と歯周が関与する場合は、治療の順序と予後の見立てを整理します。
親知らず由来などの場合:原因に応じた専門的対応
親知らず周囲炎など歯内療法以外が原因の場合は、適切な処置方針(消炎・抜歯適応など)を判断します。症状が強いほど「原因の取り違い」が起こると治療が遅れるため、鑑別を丁寧に行います。
受診の目安
- 頬・顎の腫れがある(片側でも両側でも)
- 痛みが強い/発熱がある
- 口が開けにくい、飲み込みにくい
- 以前から根管治療済みの歯が腫れてきた
- 抗生剤で一時的に引いても、再び腫れる
