慢性根尖性歯周炎
慢性根尖性歯周炎(まんせい こんせんせい ししゅうえん)は、歯の根の先(根尖)周囲に感染や炎症が長期間持続している状態です。痛みがほとんどない、あるいは全くないまま進行することも多く、「レントゲンで影があると言われた」「何年も前に神経を取った歯が気になる」といった相談をきっかけに発見されるケースが少なくありません。当院では、慢性病変の背景にある根管内感染の構造を精密に評価し、歯を長期的に残すための歯内療法(根管治療・再治療)を行います。
慢性根尖性歯周炎とは
歯の内部(根管)に細菌感染が存在すると、根尖孔を介して根の先に炎症が波及します。急性期を過ぎ、体の防御反応と細菌との間でバランスが取れた状態が続くと、痛みなどの自覚症状が乏しいまま、根尖部に炎症性変化が残存します。これが慢性根尖性歯周炎です。
「痛くない=問題ない」ではない理由
慢性根尖性歯周炎は、痛みがないことが多いため放置されがちですが、根尖部では骨の吸収や炎症が持続しています。病変が徐々に拡大したり、ある日突然急性増悪して強い痛みや腫れを引き起こすこともあります。
主な症状
- 自覚症状がほとんどない、または軽い違和感のみ
- 噛むと軽く響く感じがすることがある
- 歯ぐきに小さなできもの(瘻孔(フィステル))ができ、膿が出ることがある
- レントゲンやCTで根の先に「影」が見つかる
- 体調不良や免疫低下をきっかけに急に痛み出すことがある
原因
慢性根尖性歯周炎の本質的な原因は、根管内に残存・再侵入した細菌感染です。
1)根管治療が未処置・不十分だった場合
根管の見落とし(未処置根管)、洗浄・消毒不足、封鎖不良などにより、細菌が根管内に残存すると、慢性的な炎症が持続します。
2)根管治療後の再感染
神経を取った歯でも、被せ物や詰め物の隙間、歯冠破折などから細菌が再侵入すると、慢性の根尖病変として再発することがあります。
3)慢性病変が長期間存在しているケース
何年も前から影があると言われていた歯や、痛みが出たり引いたりを繰り返している歯では、慢性根尖性歯周炎が背景に存在していることが多くみられます。
診断のポイント
慢性根尖性歯周炎は症状が乏しいため、画像診断と歯内療法的評価が極めて重要です。
- 問診(過去の治療歴・症状の経過)
- 打診・咬合検査(軽度の反応が出ることがある)
- 歯周検査(瘻孔(フィステル)の有無、歯周病との鑑別)
- デンタルX線・歯科用CTによる根尖部評価
- 根管形態(側枝・イスムス・未処置根管)の把握
治療方針:原因は「根管内」にある
慢性根尖性歯周炎の治療では、症状の有無に関わらず感染源である根管内の細菌を制御することが最優先です。当院では、歯内療法専門として、以下の治療戦略を組み立てます。
1)再根管治療(非外科的歯内療法)
既存の根管充填材を除去し、未処置根管や複雑な根管形態を精密に探索したうえで、洗浄・消毒・再封鎖を行います。多くの慢性病変は、適切な再根管治療により治癒が期待できます。
2)外科的歯内療法(必要な場合)
非外科的治療で改善が難しい場合や、補綴物を外せない条件がある場合には、歯根端切除術などの外科的歯内療法を検討します。
3)治療後の封鎖性・修復設計
根管治療が成功しても、歯冠側の封鎖が不十分であれば再感染します。当院では、治療後の修復計画まで含めて再発防止を重視します。
放置した場合のリスク
慢性根尖性歯周炎を放置すると、病変が徐々に拡大したり、急性増悪による強い痛み・腫れを引き起こす可能性があります。また、歯根破折や歯周組織の悪化など、歯の保存自体が難しくなる要因が重なることもあります。痛みがない段階こそ、適切な診断と治療が重要です。
よくある質問
- Q. 痛くないのに治療は必要ですか?
- A. はい。痛みがなくても、根尖部では炎症が続いている可能性があります。
将来的な急性化や歯の喪失を防ぐため、原因治療が重要です。 - Q. 影があっても自然に治ることはありますか?
- A. 根管内感染が残っている限り、自然治癒は期待できません。
適切な歯内療法により、治癒を目指します。 - Q. 再根管治療で必ず治りますか?
- A. 多くの症例で改善が期待できますが、
根管形態や病変の大きさ、歯の条件により外科的治療が必要になる場合もあります。
