LAI(レーザーを応用した根管内清掃)

LAI(Laser-Activated Irrigation:レーザー応用根管洗浄)は、Er:YAGレーザーを用いて根管内に光子誘導励起光音響流(photoacoustic streaming)を発生させ、従来の洗浄法では到達困難であった部位まで洗浄効果を及ぼす、次世代の根管内清掃法です。当院では、このLAIを科学的根拠に基づき、安全性・有効性の両面から厳密に管理しながら臨床応用しています。

LAIとは何か ― 光音響流を利用した根管洗浄

LAIは、レーザー光が液体中で吸収されることで瞬間的な蒸気泡(バブル)を形成し、その膨張・収縮により強力な流体運動(光音響流)を生じさせる現象を利用した洗浄法です。この流体運動は、ファイルやチップが直接届かない部位にも作用し、根管壁・側枝・イスムスといった複雑な解剖学的構造内の汚染物質除去に寄与します。

従来の根管洗浄法との決定的な違い

シリンジ洗浄や超音波洗浄では、洗浄液の到達範囲や流体エネルギーに限界があります。一方、LAIではレーザー照射によって生じる光音響流が、根管全体に三次元的な流体運動を発生させるため、機械的清掃だけでは残存しやすいデブリ・スメア層・細菌叢への作用が期待されます。

  • 側枝・イスムスなど複雑形態への洗浄効果
  • 器具未到達領域への作用
  • 洗浄効率の向上と再感染リスク低減

光子誘導励起光音響流(Photoacoustic Streaming)の科学的背景

Er:YAGレーザーは水への吸収率が極めて高く、低侵襲で効率的にエネルギーを液体へ伝達できる特性を有します。この特性により、根管内洗浄液中で急速な蒸気泡の生成と消失が起こり、圧力波と流体せん断力が生じます。当院では、これらの物理現象についても研究・論文ベースで理解したうえで、臨床応用を行っています。

安全性について ― 根尖孔外への圧力制御

LAIにおいて最も重要なのは安全性の確保です。不適切な照射条件では、根尖孔外への圧力上昇や洗浄液逸脱のリスクが指摘されます。当院では、照射エネルギー・周波数・チップ形状・挿入位置を厳密に管理し、科学的検証に基づいた条件設定を行っています。これは、院長が長年にわたりLAIの圧力挙動・安全性評価に関する研究を行ってきた背景に基づくものです。

LAIが有効と考えられる症例

LAIはすべての根管治療に万能ではありませんが、特定の条件下では大きなメリットを発揮します。当院では、症例ごとに適応を慎重に判断したうえで導入しています。

  • 再根管治療が必要な症例
  • 側枝・イスムスが疑われる症例
  • 難治性根尖性歯周炎
  • 従来法で治癒が得られにくかったケース

当院でLAIを扱える理由

LAIは「レーザーがあるからできる治療」ではありません。レーザー歯学・歯内療法の両分野に精通し、物理特性・生体影響・臨床成績を理解したうえで初めて成立する治療法です。当院では、歯内療法専門医・指導医としての臨床経験と、LAIに関する多数の研究・論文実績を背景に、安全性と有効性を両立した形でLAIを提供しています。

LAIは「魔法の治療」ではありません

LAIは根管治療の成功率向上に寄与する一つの手段であり、診断・感染源除去・封鎖といった基本原則を置き換えるものではありません。当院では、LAIを過度に強調することなく、科学的根拠に基づいた総合的な歯内療法の一環として位置づけています。